『憲法とはなにか』       桜井よしこ 著    小学館

                      

  

 竹中平蔵氏と佐藤正彦氏の対談形式で、経済が分かったような気になれる1冊。佐藤氏は、「だんご3兄弟」の作詞もやっちゃうクリエーターで、もともと電通でCMを作っていた人だけに、鋭い切り込みで竹中氏に経済を語らせる。

 意識せず読み始めたのだけど、第六章「強いアジア、弱いアジア アジア経済の裏表」にさしかかり、「中国を読む」の1冊に決まっていた。

 この章で竹中氏が佐藤氏にこんな質問をしている。

 「佐藤さんは、自分がアジア人であるということを実感されることってありますか。」

 対して佐藤氏。

 「いえ。正直言いますと日本人としての意識はあるけれども、アジア人というのはないですね。」

 多くの日本人の正直な実感だ。

 ちなみに、ヨーロッパは言語の起源が同じという意識で繋がっている。けれど、アジアは漢字で繋がっているとは言いづらいし、宗教も違う。ひとつ言えることは、アジアは「経済の取引という実利を通して結びついていった地域」なんだそうだ。

 例えば、1980年代以降のアジアの経済発展に日本が関係している。日本が機械や部品を輸出したことで、日本の技術がアジアの発展途上国へ広がり、結果「世界の生産基地」としてアジアの発展基盤が出来上がっていく。冷戦時代の数々の戦争から解放され、「みんなで豊かになりたい」と前向きに人々が働いたことも大きく影響していた。

 ベトナムに代表されるように、アジア人は「明日死ぬかもしれない」という状態から、「今は頑張ればテレビだって買える」。この落差が、経済至上主義になりそうな怖さを持つ反面、アジアのパワーの一因なのかもしれない。

 竹中氏が、タイの元首相の言葉を引用してこう言っている。

 「『戦場から市場へ』と。昨日まで戦ってきた相手と今度は商売する。」
 この「したたかさ」が、アジアのパワーなのだ(真中智子)



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